ぷちらば


07.視点 E

「鋼の、おいで」

う、マズい・・・。
顔は笑って手招きしてるけど、この声のトーンは確実に怒ってる。
近づいちゃダメだ。この雰囲気は絶対ヤバい。

そんなことまでわかっちゃうのは、目の前にいるこの男とオレが・・・・・・恋人だから。



上官が恋人なことで良いことなんてこれっぽっちもない。
旅先でちょっとケンカしただけでも、その地方の司令部から大佐に連絡が行っちゃって
次に東部に帰った時には、必ずこうやって呼び出されて説教を喰らう。
それだけならまだマシだけど・・・・・・

「ほら、おいで」

「やっ・・・や、やだぁ・・・ッ!!」

説教だけで終わったことなんて、ほとんどない。
絶対、説教の後にぐいって腕ごと引っ張られて、大佐の膝の上で散々な痛い目に遭わされる。

大佐は恋人だからって甘くなんてしてくれない。
公私の区別はキッチリ付けてる。
まぁ、こっちもなぁなぁの関係になっちゃうよりはいいと思ってるから
大佐の考えはよく解るし、そこは賛成なんだけど。
だけど・・・・・・15歳にもなるのに、この仕打ちはないんじゃないの!?

「やっ、やだぁっ!!」

「こら」

大佐の膝の上で暴れたら、ピシャリとお尻にお咎め。
ビックリしてオレが固まってる一瞬の隙に、大佐はスルスルっていとも簡単に
下着ごとズボンを膝まで下ろしてしまう。

「やだやだやだぁーッ!!」

説教されただけでわからない年齢でもないのに、いっつもお尻ぶたれて
反省させられるだなんて納得いかない。
力の限り抵抗してみるけど、成功したことはまだ一回もない。
悔しいけど、相手は大人の男なんだって、差を見せつけられる。

結局、腕は捻り上げられて

「しっかり反省しなさい」

大佐に低い声で告げられたら、もう終わり。

「ふぇぇぇっ・・・・・・やっ・・・も、やだぁっ・・・・・・!!」

バチンッ!バチンッ!って何回も同じ音を聞かされながら
顔が涙でぐしゃぐしゃになるくらい泣いたって

「たいさっ・・・・やぁっ・・・・・いたいぃっ・・・・・・!!」

お尻が真っ赤になったって

「ぐすっ・・・ふぇぇっ・・・やぁ・・・も、むりぃっ・・・!!」

身をよじりながら抵抗したってダメ。
大佐はホントにオレが反省するまで、絶対お仕置きを止めてくれない。

散々引っ叩かれて、散々泣き叫んで、しゃくりあげながらギュッて
大佐のズボンを掴んで痛みに耐えてると

「・・・鋼の、何か言うことがあるんじゃないか?」

ようやく手を止めた大佐が、頭上から声をかけてくる。
これが許されるチャンス。

こっちはお尻は痛いし、捻り上げられた腕は痺れてくるし、顔は涙でぐしゃぐしゃだし
泣き喚いて声も枯れてるからすぐには返事が出来ないんだけど
この時は、大佐もちゃんと待ってくれる。

ここで一言ちゃんと言えたらおしまいになるんだろうけど、こっちにだって意地がある。
変な意地張らなくてもいいのに・・・って自分でも思うけど、でもやっぱり恋人なのに
こんな子供扱いなお仕置きなんてムカつくし、元々素直な性格ってわけでもないし。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

せめてもの抵抗ってやつ?
むくれて黙っててやるんだ。
それでもなかなか返事をしないと、大佐の手が返事を催促するみたいに
ピタピタとお尻をはたく。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

それでもまだ無駄な抵抗をするオレ。
こんなことしたらこの先どうなるかなんてホントは嫌ってほどわかってる。
・・・・・・だって何回も味わわされてるし。
バカだって自分でもわかってるけど、でも言えないもんは言えないんだもん。

ギュッと両手で大佐のズボンを強く掴んで、次にくるであろう衝撃に備える。
大佐は相手が恋人であっても容赦しないことは、もう充分知ってるから。
ホントは一言ちゃんと言えたらそれだけで済むのに、こういう時
そうできない自分の素直じゃない性格が恨めしい。

「・・・・・・仕方がないな」

ため息と一緒に大佐の声が漏れて、背後でふっと腕の上がる気配。
気配を察知するとどうしても怖くて思わず

「やっ・・・やっぱ、やっ・・・・・・!!」

ジタバタと手足がバタつく。
それを難なく押さえこんで

バチィィンッ!!

「ひぅっ・・・・・・ッ!!」

今日一番の甲高い音が響いた瞬間、信じられないくらいの衝撃。

「ふぇぇっ・・・・・・うえぇぇぇっ!!」

真っ赤に腫れてるお尻はヒリヒリと熱を持ってるのに
そこに容赦なく飛んでくる大佐の右手。
間隔を空けられたせいか、余計に痛く感じる。
それがわかってるから、大佐はさっきまでと違って妙にゆっくりと間隔を空けてくる。
ちくしょーっ、この男ホント信じらんないくらい性格悪ぃ!

ジタバタ暴れれば暴れた分だけ、きつくぶたれるし、逃げらんないし
とにかくお尻が痛くてたまらない。

「やっ・・・ふぇぇっ・・・ごめ・・・・・・なさいぃっ!!」

結局、どれだけ意地を張っても本気の大佐には敵わなくて
10回もぶたれないうちにギブアップ。
涙でぐしゃぐしゃになってた顔が、余計にひどくなった気がする・・・。

「・・・最初からそれが言えていれば、ここまでひどくならなかったのにねぇ」

お尻が痛くて膝の上から動けないオレの頭を撫でながら、大佐がため息交じりに言うけど
しょうがないじゃん、だってなんか悔しくて言えなかったんだから。

上官でもあり、後見人でもある大佐。
外じゃ女性には優しいし、街の人達にも親切で、部下にも慕われてる。
でも、ホントは意地悪だし、オレにばっかり厳しいし・・・・・・いいところって言ったら、顔ぐらい?

だけど・・・・・・

「ほら、鋼の。おいで」

そっと抱き上げられて、膝に座らされて。
小さな子供みたいにそっと頭を撫でられる。
完全な子供扱いで、普段なら文句のひとつも言うところだけど
さっきまで怒った顔してた大佐があんまりにも優しく笑うから
今は何も言わないでおこうなんて思ってしまう。

「鋼の・・・」

怒っていた時とは全く違う声のトーン。
それが妙に心地よくて

「・・・・・・ん」

もうちょっとこのままでもいいかな・・・なんて思ったり・・・。



オレにとっては、上官でもあり後見人でもある大佐。
意地悪で厳しくて、この男サイテー!って思う時もあるけど・・・。
だけど、ホントは誰よりも甘くて、優しく笑う・・・・・・・・・オレの恋人。