ぷちらば


01.声を聴かせて

「いーやーだー!!!」

駅の構内に、エドワードの大きな声が響く。

「もう、何がそんなに嫌なのさ。
 報告はちゃんとしなきゃダメでしょ?」

反対にアルフォンスの声はとても穏やかで。

「やなもんは、やだっ!!」

「もう〜、兄さんったら子供みたいにワガママ言わないでよ・・・」

やれやれ・・・といった表情でアルフォンスは肩をすくめて見せた。





今、この兄弟が言い争っているモノ・・・それは一台の電話である。
東部で得た情報を頼りに、今度は少しばかり南を訪れていた。
結局はその情報もハズレで、空振りの結果となってしまったのだが。
二人がうなだれて次の目的地へ出発するべく駅に向かったところ
軍からの速達が届いた。

曰く、「査定が近いので、今どこにいるのか居場所を明確にせよ」とのこと。
ただそれだけのことで、電話を入れれば5分で事足りるような内容なのだが
エドワードにとってはその電話をする相手が気に入らないらしい。
真っ白な紙の一番下には、よく出入りする東方司令部の電話番号と
最高司令官であるロイ・マスタング大佐のサイン。
その手紙を読んだ瞬間からエドワードは先程のような調子で
電話をかけるのをかたくなに拒んでいるのだ。





「もう、ホントに何がそんなに嫌なの?」

「やなもんは、やだっ!!」

「電話する相手が大佐だから?」

「ちっ、違う!!・・・とにかくやなの!!」

まるで叫ぶかのように言うと、エドワードはぷいっと顔を逸らしてしまった。
こうなってしまったエドワードには何を言っても無駄だということを
弟であるアルフォンスは今までの経験上、一番良く知っていた。
ふぅ・・・とため息をつくと、そっと受話器を持ち上げる。

「・・・今回だけだからね?」

一応そう念押しをして、速達に書かれたダイヤルを回す。

「なに、なに、アルがオレの代わりにかけてくれんの!?
 やった!!やっぱ持つべきものは弟だよな〜」

アルフォンスが電話をかけ始めた途端、エドワードは先程のふくれっ面はどこへやら
一転して満面の笑みでアルフォンスの背中に飛びついた。

「もう、兄さんったら現金なんだから・・・」

いつもながら、これではどちらが兄かわからない。

プルルルル・・・・・・

しばらく呼び出し音が響いて、ようやく司令部に繋がった。
アルフォンスは交換手に兄の代理である事を告げ、ロイの名前を口にする。

「しばらくお待ちください」

と、交換手に言われた後、ようやくロイに繋がった。

「すまない、待たせたねアルフォンス君」

「あっ、いえ。お忙しいところすいません」

ロイと軽く挨拶を交わすアルフォンスを隣で見ていたエドワードは
弟の丁寧な話しぶりに思わず

(なんか最近アルが大人になったみたいに感じるよな〜・・・)

などと、妙な感心をしていた。

「・・・というわけで、南部の情報もハズレだったので
 次は北の方に行ってみようかと思ってるんです」

「そうか、そこには何日ぐらい滞在する予定かね?
 査定の日は近いからね、あまり長居をしていては期日を過ぎてしまうよ」

「えっと・・・・・・」

返答に困ったアルフォンスは自分の隣でちょこんと座り込んでいるエドワードを
チラリと見やる。

「兄さん・・・何日ぐらい居る予定?」

「ん〜・・・今日入れて1週間ぐらいじゃねーの?」

エドワードが小さく欠伸をしながらアルフォンスに答える。

「あっ、すいません。1週間ぐらいだそうです」

アルフォンスは今のエドワードの言葉をロイに伝えた。

「わかった。それなら大丈夫だろう」

ロイの答えを聞き、用事も済んだと判断したアルフォンスは

「それじゃぁ・・・」

と、受話器を置こうとしただが、それはロイの発言によって遮られた。

「あ、ちょっと待ってくれ。そこに鋼のが居るだろう?」

「え、はい。居ますけど・・・」

ロイの問いに、アルフォンスはまたチラリとエドワードを見た。
視線に気付いたエドワードは、アルフォンスが何を言われたのかを悟り
ぶんぶんと大きく首を横に振った。

「代わってくれないか?」

ロイがそう言うのでアルフォンスはそっと受話器をエドワードに渡そうとした。
だがエドワードは受け取ろうとせず

「オレはいないって言って!!」

またも激しく首を横に振る。

「でも・・・いるって言っちゃったし・・・」

アルフォンスはそう言って、さらにずいっとエドワードの方へ受話器を持つ手を伸ばした。

「や・・・やだっ!!」

だが、エドワードはアルフォンスからずりずりと後ずさりを始める。

「ちょっと兄さん、あんまり大佐を待たせちゃ失礼だよ」

「う・・・だってやだっ!!」

ついにエドワードは公衆電話から離れようと、くるりと身を翻して逃げようとした。
だが、まさにその時。

「・・・鋼の、いい加減にしなさい」

エドワードの耳にロイの声が響いた。
びくりと肩を大きく震わせて、エドワードはそろりと後ろを振り返る。

「聞こえているんだろう、鋼の?」

そう問いかけられても、エドワードは何も答えられずにただ受話器を見つめるだけ。

「何を意地になっているのかは知らないが・・・・・・」

段々とロイの声が低くなる。

「いい加減にしなさい」

ピシリと言い放ったロイの口調はいつも通りだったが、声のトーンはまるで違っていて。
エドワードにはこのトーンが最後通告であることがよくわかっていた。
ついこの間、経験したばかりなのだから。





その日、エドワードは閲覧許可書にサインを貰う為に、ロイの元を訪れていた。
折角、研究所に行ったものの、責任者の許可書がないと閲覧不可だと言われたからだ。
それならば・・・と、エドワードは早速ロイの元へと足を運んだのである。
だが、ロイは

「ダメだ、許可は出せない」

と、冷たく言い放った。

「なっ・・・なんでっ!?
 大佐のサインもらうためにわざわざ来たのに!!」

エドワードがどんなに頼んでも、ロイは

「ダメだ」

と、言うだけで、エドワードの意見などまるで聞いてくれない。

「ここにちょっと名前書いてくれるだけで良いんだってば!!」

だが、エドワードも引き下がらない。
閲覧許可書が必要なほどの重要な資料。
もしかしたら今度こそ、賢者の石を・・・自分達の目指しているものを
手に入れられるかもしれない。
そう思うと、何としてでも今この場でロイのサインを手に入れて
一分一秒でも早くその資料を読んで、元の身体に戻りたい。

「ほら、ここにサインして!!」

「・・・鋼の、ダメだと言っているだろう?」

段々とロイの声のトーンが下がってきている。
だが、エドワードはそれを無視して

「あーもう!サインぐらいケチケチすんなよ!!
 早く、許可書出して!!」

なおもまくしたてた。

「・・・・・・鋼の・・・いい加減にしなさい」

そう低く呟いたかと思うと、ロイは椅子から立ち上がり
執務机の向かい側にいたエドワードの元へと歩み寄る。

「大佐・・・サインしてくれる気になったんだ?」

その歩み寄ってくるロイの顔が相当怖い顔になっていることに気付いて
さすがにエドワードも少々の焦りを感じた。
今までエドワードはここまでロイを怒らせたことがないので
この先どうなるか、全くの未知数なのだ。

「あ・・・あの大佐・・・許可書にサイン書いて欲しい・・・んだけど・・・」

目の前に来たロイに、エドワードはおずおずと許可書を差し出すが
差し出した腕ごとロイに掴まれて、ぐいっと持ち上げられ
そのまま小脇に抱え込まれてしまった。

「おわっ・・・ちょっと大佐!?」

いきなり身体が宙に浮いて驚くエドワードにはお構い無しに
ロイはそのままエドワードを抱えてソファに移動すると
どっしりと腰を落として、エドワードを自身の膝の上にうつ伏せにさせた。

「大佐!離せよっ!!」

エドワードはロイの膝の上でジタバタともがくが
子供が大人に、ましてや鍛え抜かれた軍人に敵うはずもなく
どんなに抵抗してみても、ロイはびくともしない。

「このっ・・・離せーっ!!
 何するつもりだ、この無能!!」

悔し紛れに、口で抵抗してみると

「駄々をこねる困ったお子様には、お仕置きだ」

ロイは低い声でそう言いながら、エドワードのズボンに手をかけ
そのまま下着ごと膝まで下ろしてしまった。

「ちょっ・・・!?何すんだッ、大佐の変態〜ッ!!」

小さなお尻を外気に晒される羽目になってしまったエドワードは
恥ずかしさから、顔を真っ赤にして抗議したが

「言っただろう?『お仕置きだ』とね」

ロイは冷たい声色で返すだけで、全く相手にしてくれない。
背後で何か気配がすると、エドワードが察した瞬間

バチンッ!!

「いたぁぁっ!!」

突然、痛みに襲われた。

バチンッ!!パァンッ!!パァンッ!!

「いっ・・・いたぁっ・・・ひっ」

連続して襲ってくる痛みに、一瞬遅れてやってくる熱。
痛みと熱とを交互に感じていたエドワードは
ようやく自分がお尻をぶたれているのだと気が付いた。

「やっ・・・大佐っ・・・何すっ・・・!!」

こんな子供みたいなお仕置きなんて、恥ずかしすぎる。
エドワードは何とか逃れようと懸命に手足をバタつかせるが
ロイの膝の上からは、一向に逃げられそうもない。
それどころか、暴れるたびにきつい平手が降ってきては
エドワードのお尻に赤い痕をつけるので、エドワードはそのうち
ろくな抵抗も出来なくなってしまった。

パァンッ!!バチィンッ!!バチンッ!!

「ふぇっ・・・いたぁっ・・・たいさ、いたい〜ッ!!」

パァンッ!!パシンッ!!バチンッ!!

「ひぅっ・・・う〜っ・・・も、やっ・・・」

バチンッ!!バチンッ!!バチィンッ!!

「いたぁっ・・・やだぁっ・・・も、やだぁっ・・・うぇぇぇっ!!」

ろくな抵抗も出来ず、何度も何度も繰り返される平手打ちに
エドワードは遂に我慢出来ずに盛大に泣き出してしまった。
それでもロイは一言も言葉をかけてくれることなどなくて
そのまま厳しく平手を振り下ろしては、エドワードのお尻を赤く染めた。

「ふぇぇぇっ・・・たいさっ・・・も、やだぁぁっ!!」

バチンバチンと肌を張る音が鳴ると同時に、エドワードの背がびくんっと
大きく仰け反っては、ロイがそれを押さえつける。
そして、それが何度も何度も繰り返される。
エドワードはもはや全く抵抗する気力もなくなってしまって
顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら、ただただロイの手が止まってくれるのを願うだけ。

パァンッ!!バチンッ!!バチィンッ!!

「うぇぇぇっ・・・ふぇぇっ・・・わあぁぁんッ!!」

エドワードのお尻は、可哀想なぐらいにまんべんなく真っ赤で
平手が振り下ろされる度に、ポロポロと大粒の涙を零した。

「ふぇぇぇっ・・・たいさぁ・・・も、ゆるしっ・・・」

こんな風に子供がされるようにお仕置きされて、泣きながら許しを請うなんて
何だか情けない気もしたけれど、もうお尻が痛くて熱くて、とてもじゃないが
これ以上は耐えられそうもなかった。

「ぐすっ・・・たいさ、おねが・・・ふぇぇぇ」

泣きじゃくりながら、ぎゅうっとロイの膝にしがみついて、小さく震える。
今までエドワードがどんなにワガママを言っても、ロイは少々のお説教をするか
エドワードを多少意地悪に抱くか、ぐらいで済ませてくれていた。
それもエドワードが泣き始めると、しょうがない・・・という風ではあったけれど
必ず許してくれていた。
今回のように、一言のお説教もなく、泣いても許してくれないなんて
厳しいロイは初めてで、エドワードはそんな初めてのロイがとにかく怖い。

(オレのこと、嫌いになったから・・・こんなに痛くすんの?
・・・も、許してもらえない・・・?)

今回は許してもらえないのかもしれないと、そう思うと
悲しくてエドワードの目からは余計に涙がこぼれ落ちた。

「ふぇ・・・たいさぁ・・・ふえぇぇっ・・・」

必死に許しを請うエドワードのお尻は赤く腫れ上がっていた。
肩を小刻みに震わせてしゃくりあげながら、エドワードはロイの膝を
ぎゅっと掴んでいる。
自分を呼ぶその姿はまだ幼く、さすがにロイも可哀想に思って

「鋼の、どうしてお仕置きされたか言ってごらん?」

そっと、助け舟を出してやることにした。

「ふぇっ・・・?」

終始黙りこくっていたロイが、口を開いて自分のことを呼んでくれたことが
何だか少し嬉しくて、エドワードは無い力を振り絞って、ロイを見上げた。

「鋼の、言ってごらん?」

ロイが先ほどまでよりは少し優しい声になっているのに気付いて
エドワードは、また少し嬉しくなった。
自分はまだ、目の前のこの男に見捨てられたわけではないのだ、と。

「えと・・・えっと・・・ぐすっ・・・」

エドワードはじんじんと熱いお尻が痛んだけれど、これが許されるチャンスだと
しゃくりあげながらも必死に考えた。

「・・・ワガママ・・・言って・・・ぐすっ・・・大佐、困らせた・・・」

エドワードの答えに、ロイは正解とばかりに頭をくしゃりを撫でると

「鋼の、こういう時には、言うべき言葉があるだろう?」

そっとエドワードに耳打ちする。

「ひくっ・・・・・・ご・・・ごめんなさい・・・?」

「聞こえないよ。もっと大きな声で言いたまえ」

「ご・・・ごめんなさいっ!!」

泣きじゃくって、枯れた喉でエドワードが精一杯叫んだら
ふわりと身体が浮いて、ロイの膝の上に向かい合わせに座らされた。

「・・・ちゃんと反省したかね?」

「ぐすっ・・・・・したっ・・・」

「・・・怖かったかね?」

「・・・も、許してもらえな・・・と思って・・・ぐすっ・・・
 オレのこと嫌いになったから・・・痛くするんだって・・・こわかっ・・・ふぇぇぇ」

目の前でまた泣き出したエドワードを、ロイはぎゅっと抱きしめてやると

「私が君を嫌いになるわけないじゃないか・・・」

そう言いながら、ポロポロと涙が零れる瞳の上に軽くキスをした。





これが、つい先月のこと。
今にして思えば、旅から帰ってきたばかりで疲れているエドワードを
ロイが気遣ってくれていたから、サインをしなかったのだと理解できるけれど
その時は、そんなことを考えてくれているなんて全く気付きもしなかった。
とにかく終始無言で平手を振り下ろしてくるロイは怖いし、お尻もめちゃくちゃ痛いし
何よりも、ロイに嫌われたかもしれないという不安でいっぱいで。
あの時の恐怖は、忘れようと思っても忘れられない。
嫌でも身体が覚えてしまっている。





「う〜〜・・・・・・」

その時のことを思い出して、硬直状態で受話器とにらめっこをするエドワードに
ロイはさらに追い討ちをかけるかのように、低い声で、エドワードの名前を呼んだ。

「鋼の・・・・・・」

エドワードはまたビクリと大きく肩を震わせる。

(べっ、別にこの前みたいなお仕置きが怖いとか・・・大佐が怖いとか・・・
 そんなんじゃないぞ・・・絶対・・・!!)

そう負けず嫌いな自分に言い訳をしながら、エドワードは
恐る恐るアルフォンスから受話器を受け取った。

「・・・・・・な・・・何デスか?」

ビクビクと怯えて声が震えているのがわかって、ロイは思わず苦笑をもらした。

「おやおや、そんなに怯えなくとも良いじゃないか」

そう言ったロイの声はいつものトーンで。
少なからず本気で怒っていたわけではないとわかって、エドワードは思わず安堵した。

「べ・・・別に怯えてなんかねーもん・・・」

図星を突かれてエドワードは不満そうに文句をもらした。

ようやくまともに会話を始めたエドワードを見て、アルフォンスは

「僕、列車の時間を見てくるよ」

と言って、電話ボックスから離れていった。
これは自分が側にいては、照れてロイと素直に会話できないであろう
意地っ張りな兄へのアルフォンスなりの配慮。

「鋼の、何故すぐに電話に出てくれないんだね?
 いくら私でも、あれだけ大きな声で『嫌だ』などと言われては
 やはり傷付くんだがね・・・・・・」

「えっ、あ・・・あれは・・・」

ロイが本当に傷付いたかのような声を出すものだから、エドワードは思わず焦ってしまう。
電話に出たくない理由なんて、本当はただのワガママみたいなものでしかないのだ。
だが、それでもロイ傷付けたとなると、話さないわけにはいかなかった。

「だって・・・・・・声・・・・・・」

「・・・声??」

「だからっ・・・・・・!!」

こんな子供じみた理由なんて、本来ならば口にするのも恥ずかしい。
ロイが一向に勘付く様子がないので、八つ当たりとはわかっていても
エドワードは思わず声を荒げてしまう。

「だからっ・・・!!電話で声・・・聴くと・・・困る・・・・・・逢いたく・・・なる・・・」

勢いよく叫んでみたものの、後ろの方は恥ずかしくて声が小さくなる。

電話に出たくない理由なんて、こんな子供じみたワガママで。
声を聴くだけでは満足できないほど自分がロイに夢中だなんて、認めるのも何だか癪で。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

エドワードは受話器を持ったまま、真っ赤になって黙ってしまった。

「鋼の、声を聴くだけで満足できないのなら、逢いに来てくれれば良いじゃないか」

「だって・・・・・・賢者の石・・・・・・」

「なぁ、鋼の。私は司令官として東部を離れるわけにはいかないから
 私から君に逢いに行くのは難しいんだ。
 だから、時々君が資料を見に来る目的であっても
こちらに来てくれるのが嬉しいんだよ。
 それなのに君は、そんな私の楽しみを奪う気かね?」

「そ・・・そんなこと言われてもっ・・・」

逢えることが嬉しくて、楽しみだなどと言われて、自分だけが相手に
夢中なわけではないとわかって、エドワードは何だか胸がじんわりと熱くなった。

「だから・・・帰っておいで鋼の」

「う・・・でもっ・・・」

優しく言われても、エドワードには賢者の石を探すという大きな目的がある。

「声を聴いて、逢いたいと・・・そう思ってくれたのではないのかね?」

「そりゃぁ・・・まぁ・・・ちょっとは思った・・・けど・・・」

本当は『ちょっと』どころではないと、本人もわかっているが
やはり照れて、なかなか素直には言えない。
それをわかっているロイは、エドワードが帰ってくるようにと、更に一言追加する。

「それにね、鋼の・・・・・・」

「?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」





「バカ−ーーーーーッ!!!」

一際大きな声で叫んだかと思うと、エドワードは思いっきり受話器を叩きつけた。
それを聞きつけたアルフォンスが慌てて飛んでくる。

「ちょ・・・ちょっと兄さん!!
 また大声出して何やってるのさ!?」

「・・・・・・・・・・・・アル・・・」

肩で荒く息をしていたエドワードが、振り返るとものすごい形相で呟く。

「・・・・・・東部に行くぞ」

「へ!?今度は北に行くんじゃなかったの!?」

「あのエロ大佐のスカした面に、一発ブチかましてやるッ!!」

そう言うと、エドワードは荷物も持たずに走り出してしまった。

「あっ、ちょっと兄さん!!
 も〜・・・いつも勝手なんだから・・・」

かたくなに電話を拒否していたエドワードが、元気になった姿を見て
アルフォンスは少なからず安堵し、そして兄の身勝手さに少なからずうなだれた。

(まぁ・・・兄さんらしくて良いけどね)

あの兄の弟に生まれてしまったものは、仕方がない。
アルフォンスはある種、諦めにも似た感情を持ちながら、慌ててエドワードの後を追った。





「それにね、鋼の・・・・・・」

「?」

「君は一人でしない子だから、そろそろ限界だろう?
 今帰って来たら、好きなだけ可愛がってあげるよ」