ぷちらば


13.大人の味とは

「・・・う〜・・・足痛い〜、もうやだ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・うぅ・・・ジンジンする〜・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

エドワードがどんなにぼやいても、すぐ後ろにいるロイは何も言わず、黙々と書類に向かっている。

「・・・ねぇ〜大佐・・・もう、足痛い・・・・・・」

エドワードは泣きそうな顔で、ななめ後ろを振り返ってロイにそう訴えるが

「・・・鋼の、ちゃんと前を向いて、大人しく正座してなさい」

ロイはエドワードに目もくれず、サラサラと書類にペンを走らせた。

「・・・だって・・・も、痛い・・・・・・」

言いながらエドワードは、もそもそと膝を動かした。

実はエドワードは今、ロイの執務机の上で正座させられている。
机のような固い板の上での正座なんて、普段から正座することのないエドワードにとっては
もはや拷問のようなものでしかない。
だが、エドワードが何を言っても、ロイは全然相手にしてくれない。
書類から目を離すことなく、サラサラとペンを走らせて、黙々と仕事を続けている。

「・・・も、やだ・・・・・・」

足はジンジンと痺れて、ピリピリと痛む。
エドワードは堪らず、モジモジと足を動かして腰を浮かせた。
その瞬間

パァンッ!!

「ったぁっ!!」

背後から平手が飛んできて、エドワードのお尻に衝撃が走る。

「・・・前を向いて大人しく正座していなさいと言ったはずだが?」

ロイは、ため息を吐きながら立ち上がると、エドワードの首根っこを掴んだ。
机の上に正座していても、立ち上がったロイよりは小さいので、首根っこを掴まれて
ぐいっと持ち上げられると、エドワードは自然と机の上で膝立ちさせられる格好になる。

「・・・やっ、だってっ・・・・・・」

足が痺れてもう我慢できない、と続けようとしたら

パンッ!!パンッ!!パァンッ!!

「・・・やぁっ・・・いたっ・・・ったぁっ!!」

ズボンの上からお尻を連打されて、遮られてしまった。

バチンッ!!パンッ!!パァンッ!!

「ひぅっ・・・いっ・・・やぁっ!!」

足が痺れて動かせないエドワードは、バタバタと腕を振って、お尻をかばおうとするが
5歳の小さな掌では、全部をかばいきれず、空いてしまったところに容赦なくロイの平手が
降りかかってくる。

パンッ!!パァンッ!!バチンッ!!

「やだぁっ・・・たいさ、やっ・・・いたい〜っ!!」

ズボンの上からだったけれど、とにかく痛いことに変わりはない。
そのあまりの痛みに、エドワードは泣きそうになってしまう。

バチンッ!!パンッ!!バチンッ!!

「ふぇっ・・・ちゃんとっ・・・せいざ・・・するっ・・・!!」

目尻にうっすらと涙を浮かべながら、エドワードがそう言うと、ロイはようやく手を止めた。

「・・・あまり手間をかけさせるな」

ロイはエドワードの首根っこを持ったまま、ぐいっと腕を下げると、エドワードを机に押し付けて
そのまま先程と同じように正座させた。

「・・・うぅ・・・・・いたぁ・・・」

エドワードが手で少し痛むお尻をさすろうとすると、またしてもロイはピシャリと平手で
エドワードを咎めた。

「手は膝の上」

ジロリと冷たい視線でエドワードを見やる。

「・・・えぅ・・・・・・」

少し色づいたであろうお尻を、これ以上温められたくないエドワードは、渋々ではあるが
ロイの言葉に従うしかなかった。
ロイはエドワードにはもう目もくれず、また自分の椅子に座り直して、黙々と作業を再開している。

いつもなら自分に甘いロイだから、泣きそうな顔で訴えれば、多少は優しくしてもらえた。
それなのに、今日は目に涙を浮かべても、全然優しくしてもらえない。
それほどまでにロイが怒っているということなのか。

エドワードは、ほんのり温かくなったお尻と、ピリピリ痺れる足を抱えながら
この原因を作ったつい数分前の自分を恨んだ。





司令部内の喫煙コーナーでハボックに会ったのは偶然だった。

「・・・よう、大将」

ロイに持ってくるよう頼まれた資料を抱えて、ぽてぽてと廊下を歩くエドワードに
ハボックは長椅子に座って、タバコに火を点けながら、器用に挨拶を寄こす。
ニカっと笑って、ハボックは近寄ってきたエドワードの頭をワシワシと撫でた。

「・・・やめろっての!!」

頭を撫でられるのは決して嫌いではないエドワードだが、ここは軍司令部内。
周りに人がいっぱいいる前での子供扱いなんて、何だか気恥ずかしい。

「まぁまぁ。大将もここで一服して行きなって」

ハボックはエドワードの性格を知っているので、そんな態度にも気にするそぶりも見せず
自分が座っていた位置を少しずらして、ポンポンと座席を叩きながら
エドワードを自分の隣に呼んだ。

「なんだよ、もぅ・・・」

不平をもらしながらも、エドワードは勧められた席に腰を下ろす。

軍司令部なんて閉塞的な空間の中で、ロイと、その側近の部下達は
エドワードとアルフォンスに親身になって接してくれている。
だからエドワードもアルフォンスも、この面々には飾らずに自然体でいられた。

「・・・あのさぁ、少尉。それって美味しいの?」

エドワードはハボックのタバコを指差しながら、前々から疑問に思っていたことを聞いてみた。

喫煙コーナーばかりでなく、ハボックは普段からタバコを咥えている。
彼は、もはや咥えタバコがトレードマークとさえ言われるほどの、ヘビースモーカーだ。
だが、エドワードの知識によれば、タバコなんて百害あって一利なしのはずで
どうしてそれをわざわざ好き好んで吸うのかがわからない。

「ん〜・・・別にうまいってわけでもねぇんだけどなぁ・・・」

ゆらゆらと煙を燻らせながら、ハボックは困ったように笑う。

「え〜、美味しくないのに何で吸うわけ?」

特別美味しいわけでもないのなら、ますますもってわからない。

「まぁなんつーかなぁ・・・安定剤みたいなもんなワケよ。ないと落ち着かねぇカンジ?」

「・・・・・・ふぅん・・・」

タバコなんて、背丈を伸ばしたいエドワードからすれば、必要性は対極の位置にあって
絶対にいらないものなのに、ハボックがそう言いながらも美味しそうに吸うものだから
何故か不思議と興味が出てくる。

「・・・・・・オレも吸ってみよっかなぁ・・・」

ボソリと呟けば

「こらこら、15の身体ならいざ知らず・・・大将は今、5歳だろーが。無茶言わないの」

冗談だとでも思ったのか、軽く笑われた。

「・・・だって、少尉が吸ってると美味しそうに見えるんだもん・・・」

まるで錬金術書でも見ているかのように、興味津々で見上げてくるエドワードに
ハボックは自分で隣にエドワードを呼んでおきながら困ってしまう。

「15に戻ったら、内緒で吸わせてやるから・・・な?」

街の治安を守る軍人がこんなことを言っても良いのかと思うが、ちょっとやそっとの説得では
エドワードが納得しないのをハボックはよく知っている。

「え〜・・・ちょっとぐらい良いじゃん」

案の定、エドワードは不満そうだ。
ハボックだって、エドワードの元の年齢の頃には既にタバコの味を知っていたから
興味を持つのはわからなくはない。
むしろ男の子として、しごく自然に育っていると思えるぐらいだ。
だが、いくら中身が15歳でも身体が5歳の子供にタバコを吸わせられるはずがない。

「あ〜・・・そろそろ休憩時間終わりなんだわ。また今度な、今度」

ハボックはわたわたと灰皿にタバコを押し付けて火を消すと、不満顔なエドワードを残し
早々に喫煙コーナーを離れていった。





一度興味を持った対象には、トコトン突き進んで研究する。
これがエドワードのモットーとでも言うべき信念である。
先程、『特別美味しくはないのに、タバコとは何故か吸いたくなるものらしい』という研究対象を
手に入れてしまったエドワードは、その信念に則って、トコトン研究する気になっていた。

「ダメって言われると、余計興味沸くってもんだよな」

まぁ研究というよりは、好奇心と言った方が正しいのかもしれないけれど。

「こうなりゃ、絶対に一回は吸ってやる・・・」

わりと天邪鬼な性格のエドワードは、ダメだと言われるほど、その対象に興味が沸いてしまう。
エドワードは、まず特別美味しくはないらしいタバコとやらの味を
自分の舌で確認するところから始めることにした。

エドワードは研究対象であるタバコを普段から大量に持っているであろう人物・ハボックに
狙いを定めて、先程逃げるようにして去って行った彼を探して、司令部内をウロウロと歩き回る。

まずはハボックが普段仕事をしている事務室へ。
ところが、事務室にはハボックどころか、いつもの面々も誰一人としていなかった。

「あれ・・・?」

いつもなら必ず誰かがいて、誰一人いないことの方が珍しい。

「なんだ・・・誰もいないじゃん・・・」

休憩時間が終わると、さっきハボックはそう言っていたから
てっきりここで仕事をしているものだと思っていたのに・・・。
何だか拍子抜けしたエドワードは、ギシっと音をたてて近くの事務椅子に腰掛けた。

「あと少尉が行きそうなところといえば・・・・・・」

ハボックを捕まえて、研究対象であるタバコを一本失敬する予定のエドワードは
事務室以外にハボックが行きそうな場所を頭に思い浮かべるが

「う〜ん・・・・・・食堂か・・・射撃場・・・かなぁ・・・・・・」

これだ!というような場所が思い当たらない。

ロイの場合は司令官だから、普段から司令部を離れる事がないので、大抵は執務室にいる。
いない場合も、会議か、将軍に呼ばれているかのどちらかだ。
だから、どこにいるのかはだいたい想像できる。

だが、少尉であるハボックは事務室にいないとなると、忙しく動き回っているので
どこに行ったのか、予想しづらい。

「う〜ん・・・・・・・・・・・・ん?」

どこから探すべきかと考えあぐねていたエドワードだが、ハボックの机を見て、ふと気が付いた。
無造作に置きっぱなしになっている、小さな白い箱、あれは・・・・・・

「ラッキー!!置いてあるじゃん!!」

それはさっき喫煙コーナーでハボックが取り出していたタバコの箱。
エドワードはぴょこんと事務椅子から飛び降りると、ハボックの机においてあったタバコの箱を
早速開けた。
中を見れば、10本程度のタバコが入っている。

「よし。こんだけありゃ、1本くらいバレないよな」

そう言いながら、エドワードはそろっとタバコを1本だけ取り出した。
残りは机に戻しておいて、エドワードはキョロキョロと周りを見渡す。
誰にも見られていないことを確認して、早速タバコとやらを味わってみようとするが
ここで問題発生。
タバコそのものはあるのだが、ライターが見当たらない。
火がなければ、タバコを味わうことは出来ない。
タバコの箱が置いてあるぐらいだから、ライターやマッチなども近くに置いてあるはずだと
エドワードはゴソゴソとハボックの机の周りを漁り始めた。

「・・・う〜ん・・・・・・ない・・・・・・」

引き出しまで開けて、調べたものの、お目当てのものは出てこない。
エドワードがガサゴソとその他の机の周りを漁っていると、パキンッと軽い音がして
手に持っていたタバコに突然火が点いた。

「うわぁっ・・・!?」

驚いてわたわたと慌てるエドワードの手を後ろから大きな手が包み込み
火の点いたタバコは背後にいた人物の口元へと、するりと移動する。

「えっ・・・!?」

エドワードは、まさか・・・と思って、その背後にいた人物の顔を確認するが・・・・・・

「何をしているのかと思えば・・・頼んだ資料もろくに持って来ないで
こんなところで火遊びとはねぇ・・・」

嫌な予感とは的中するもので。

「た・・・大佐・・・・・・!!」

振り返ったそこには、先程までエドワードが握っていたタバコを
発火布の手袋をはめた右手で燻らせながら、呆れた顔でこちらを見やるロイの姿。

ロイがふぅ・・・とため息を吐くと同時に、ロイの口からはタバコの白い煙が吐き出される。

「・・・うぇっ・・・・・・げほっ」

その煙が喉に入って、エドワードはむせてしまった。

「・・・タバコの味はこれをもっと濃くしたようなものだ。私はさして美味いとも思わんがね・・・」

煙が目に入って、やや涙目になっているエドワードを気遣ってか
ロイは咥えていたタバコを離すと、灰皿に押し付けて火を消した。

「うぇ〜・・・やっぱ絶対タバコって美味しくない・・・」

むせ返るような苦い匂いと、目にしみる酸っぱいような煙だけで
エドワードは吸ってもいないのに、タバコとは美味しくないものだと充分に判断できた。
そう一人で納得していたエドワードを見ながら

「さて・・・窃盗の現行犯に未成年の喫煙未遂・・・・・・」

「へっ!?」

ロイは静かに口を開く。

「これは厳重に処罰する必要がありそうだねぇ、鋼の」

「わぁっ!?」

ロイは言いながら、さっとエドワードを小脇に抱え込んだ。

「やっ、やだぁっ!!まだ何にもしてないってばぁっ!!」

5歳になってからは、それこそ毎日のようにロイの手によって泣かされているから
エドワードにはこれから何が起こるのか、充分すぎるほどわかっていた。
ズバリ、小脇に抱えられる=お仕置き、である。

「やーだーっ!!ホントに何もしてないじゃんかーっ!!」

小脇に抱えられたエドワードは、ジタバタと手足を動かして抵抗するが
所詮は小さな5歳児の身体。
その手足は空を切るばかりで、ロイは全く動じない。

エドワードの抵抗も虚しく、ロイは悠々と歩を進め、エドワードにとっては
時々恐怖のお仕置き部屋となる、執務室まで軽々と連れてこられてしまった。

「大佐、離してってばぁっ!!オレ、ホントに何もしてないーっ!!」

エドワードの叫びに、ロイは

「・・・本当に何もしていないか、よく考えなさい」

静かにそう告げると、エドワードの身体をストンと机の上に乗せて、座らせた。

「え・・・?」

てっきりまたお尻をぶたれると思っていたエドワードは
きょとんと不思議そうな目でロイを見上げる。

「私はこれでも忙しいんだよ。
しばらくそこで正座して頭を冷やしていなさい。お仕置きはそれからだ」

「なっ・・・!!なんでだよっ!!何にも悪いことしてないじゃんかっ!!」

頬を膨らませて反論するエドワードを、ロイはギロリと睨む。
こういう顔つきをしている時のロイは、本当に怒っていて、特に容赦がなくなるのを
エドワードは知っているから、つい怖くてビクッと反応してしまう。

「・・・だ・・・だって、ホントに何にもしてないもん・・・」

本当に怒っているらしいロイが怖くて、エドワードは怯え気味に視線をそらしつつも
小さく反論を続ける。

「・・・私が書類を片付けるまでに、もう一度よく考えなさい」

小さな頬を膨らませて不満顔なエドワードを、ロイはぎゅっと押さえつけて机に正座させると
自分はいつもの執務椅子に座って、仕事をし始めた。

エドワードはといえば、いつもより断然冷たいロイの態度が何だか恐ろしくて
納得できずに口を尖らせながらも、その場で大人しくしていざるを得なかった。





「ぐすっ・・・も、足いたい〜・・・」

ここで正座していろと言われて、かれこれ30分。
エドワードの足はピリピリと痺れて、もう限界だった。
けれど、少しでも動けばまた先ほどのように後ろからロイの平手が飛んでくるだろう。

「うぅ〜・・・も、やだぁ・・・ぐすっ・・・」

足は痺れて痛いし、背後にいるロイは怖いしで、エドワードはしだいに
ぐすぐすと泣き声を漏らしはじめた。
自分でも情けないとは思うけれど、もうこれ以上は我慢できなくて
溢れ始めた涙はもはや止められそうになかった。

それを見兼ねてか、ロイは走らせていたペンを止めて立ち上がると

「・・・まったく、しょうがない子だねぇ・・・」

エドワードを抱え上げて、自分と向かい合わせになるように、ちょこんと机の上に座らせた。

「いっ・・・いたぁ・・・」

ようやく正座から解放されたエドワードだが、痺れた足を急に伸ばしたものだから
ビリビリと衝撃を受けて、その痛みに小さく呻く。

「・・・さて、答えを聞こうか?」

ロイはどっしりと椅子に深く腰を掛け直し、目の前にいるエドワードをじっと見つめた。

「え・・・・・・えっと・・・」

「考える時間は充分にあっただろう?
自分がしたことが良いことか、悪いことか、わかったかね?」

確かに考える時間は充分にあった。
けれど、エドワードは元々自分が悪いことをしたなんて思っていない。
なぜなら、タバコの件は、あくまでも未遂に終わったのだから。

それに、足が痛いとか、ロイが怖いとか、そういうことにしか神経がいっていなかったから
わかったかと聞かれても、考えていないのだから、答えが見つかるわけもない。

「え・・・えと・・・・・・その・・・」

エドワードが答えられずにまごついていると

「はぁ・・・やはり君は少々痛い目に遭わないとわからないようだねぇ・・・」

ロイはため息を吐きながらそう言い、エドワードの腕をぐっと掴んだ。

「おいで」

そのまま腕を引いて、ロイはエドワードを机の上から、自分の膝の上へと移動させる。

「やっ・・・も、やだぁっ!!」

さっきまで正座させられて、もう充分痛い目に遭ったというのに
これ以上お仕置きされてはたまらない。
エドワードは何とかして、ロイの膝の上から逃れようとジタバタともがくが
まださっきの足の痺れが取れなくて、ろくに抵抗も出来ず、結局はいつものように
ロイに下着ごとズボンを膝まで下ろされて、お尻を剥き出しにされてしまった。

「やっ・・・やだっ、やだぁっ!!」

どんなに叫んでも、この状態になってしまっては、もはや何の効果もない。

パァァンッ!!

「ひぅっ!!」

部屋に大きな音が響いたかと思った瞬間、お尻に衝撃が走って、じんわりと熱くなる。

「や・・・たいさ、やだってばぁっ!!」

痺れてろくに動かない足の代わりに、エドワードは手でポカポカとロイの足を叩くが

パンッ!!パンッ!!パァンッ!!

「いっ・・・や、やだっ・・・いたぁっ!!」

ロイの平手の威力にはまるで影響がなく、それどころか、むしろきつくぶたれる。

パァンッ!!バチンッ!!バチンッ!!

「やぁっ・・・ひぅっ・・・・・・いやぁっ!!」

エドワードは何とかして逃れようとするのだが、ロイに腰をしっかりと押さえられているから
身を少しよじるのだけで精一杯。
それに少しだけ身体をよじったところで、ロイにぐっと腰ごと引き戻されて
お尻と太ももの付け根にまで平手が飛んでくる。

バチンッ!!パンッ!!パンッ!!

「ひぅっ・・・やだぁっ・・・・・・も、やぁっ!!」

パァンッ!!バチンッ!!バチィンッ!!

「いたぁっ・・・や、たいさっ・・・も、やだぁっ!!」

パンッ!!パァンッ!!パァンッ!!

「えぅっ・・・・・・たいさ、おねが・・・・・・やぁっ!!」

5歳児のエドワードの小さなお尻には、ロイの掌がすっぽりとおさまる。
だから、左右の膨らみに痛みは同時に襲ってきては、いつだってお尻は左右同じように真っ赤にされることになるのだ。

「いたぁっ・・・も、やだっ・・・・・・たいさぁ・・・!!」

パァンッ!!バチンッ!!バチィンッ!!

「うぇぇっ・・・やだぁっ・・・・・・ふえぇぇっ!!」

今日は、ただでさえ正座させられて足が痛い。
それなのに、いつもと変わらず厳しくお仕置きされて、エドワードは早々に泣き出してしまった。

「・・・鋼の、人のモノを勝手に取るのは良いことかね?」

「ふぇっ・・・?」

ロイはエドワードが泣き出したところで、振り上げていた手をそっと下ろすと、静かに口を開いた。

「未成年が・・・ましてや5歳児が、タバコなんて吸ったらどうなるか・・・
君だってちゃんとわかっているだろう?」

そう、結果が未遂に終わったのは、あそこでロイが来たからなのだ。

来なければ、何とかしてライターかマッチを探し出して、火を点けるつもりだったし
その後はもちろん、タバコとやらがどんな味がするのか、吸ってみるつもりだった。
それに10本近くあるうちの1本ぐらい、勝手にもらってもわからないだろうと思って頂いたけれど
断りもなく他人のモノを取るのは、立派な窃盗罪である。

未遂に終わったから許されるというものではなくて、そういうことをしようとしていたこと
それ自体をロイは悪事だと言い、怒ったのだ。

「ふぇぇっ・・・・・・ぐすっ・・・ごめ・・・なさいっ・・・」

ようやくロイが本当に何もしていないのかよく考えなさいと言った意味がわかって
エドワードは小さくだが素直にごめんなさいが言えた。

「君は頭は良いはずなのに、時々、本物の子供以下の行動をやらかす時があるからな・・・」

これだから目が離せなくて困ると、ロイは言いながら苦笑した。

「失礼しますー。大佐ー、さっき頼まれた書類ッスけど―――――」

ロイがエドワードをそっと抱き起こしている途中で、ノックの音と共に
ハボックが書類を抱えてやってきた。

「あ〜あ〜、大将また何かやらかしたのか?」

ハボックはエドワードの真っ赤になったお尻を見ながら、苦笑交じりに近づくと
ロイの机に持ってきた書類を置いた。

「鋼の、ついでだ。ハボックにもお仕置きされてきなさい」

「ふぇっ・・・やだっ・・・そんなのやだぁっ!!」

ロイに厳しくお仕置きされて、お尻はもう真っ赤なのに
これ以上お尻をぶたれるなんて、考えるだけでも恐ろしい。
エドワードは、やだやだと頭をブンブン振って、激しく拒否した。
だが、ロイはエドワードの意思など無視して、膝から起こした手でそのままエドワードを抱き上げ
ハボックの前へと軽々と運んでしまった。

「あの〜・・・何なんスか?」

イマイチ状況がわからないハボックは、目の前でビクビクと怯えるエドワードと
そのエドワードを運んできたロイを、不思議そうな顔つきで交互に見やる。

「鋼の、自分で言いなさい」

あくまでもエドワードがやらかしたことなのだから、自分から言わせなくては意味がない。
ロイはエドワードをコツンと小突くと、さっさと言ってしまうように促した。

「ん〜?大将、何やったんだ?」

ハボックはエドワードが少しでも言いやすいようにと、エドワードの目線まで屈んでやると

「ほら、言ってみな?」

ポンポンと頭を撫でながら、俯いたエドワードの顔をのぞき込む。

「・・・・・・お尻・・・ぶたない?」

恐る恐るハボックと視線を合わせたエドワードは、ハボックに小さくそう聞いた。

「ん〜、そりゃ内容によるな。まぁ、とりあえず言ってみな?」

ハボックは困ったように笑いながら、エドワードに先を促す。

「・・・・・・あのっ・・・タバコ・・・」

「タバコ?」

「吸ってはないけどっ・・・少尉の机から・・・1本、勝手に取ったの・・・ごめんなさぃ・・・」

しゅんと小さく俯いて、エドワードはボソボソと白状した。

「・・・なるほど。それで大佐に見つかってお仕置きされたってワケね」

事情はわかった。
エドワードは反省している面持ちだし、お尻はもう既に真っ赤だし
ちゃんと正直に白状したのだからハボックとて許してやりたい。

けれど、この場合まるでお咎めなしというわけにもいかない。
ロイが止めたから良いようなものの、そのまま5歳児の身体でタバコを吸っていたら
大変なことになっていたかもしれないのだから。
ハボックはエドワードのことを、弟のように大切に思っているから
ここはひとつ、心を鬼にすることに決めた。

「よし。じゃぁ・・・5回で勘弁してやろう」

「ふぇっ・・・!?」

言うが早いか、ハボックはエドワードを小脇に抱えて立ち上がった。

「やだぁっ・・・少尉、おねがっ・・・ぶたないでぇっ!!」

ロイにお仕置きされて真っ赤に染まったお尻には、5回だってつらいに決まっている。
エドワードはジタバタと必死に暴れるが、手足は虚しく空を切るばかり。

「ちゃんと反省しねぇと、もっと増やすぞ?」

「ふぇぇっ・・・それもやだぁ〜っ!!」

お仕置き前からビービー泣き出したエドワードに、ハボックは

「ほら、いーち!!」

パァンッ!!

「ふぇぇっ!!」

無情にもカウントを始める。

「にーぃ!!」

パァンッ!!

「ごめ・・・なさいぃ!!」

「さーん!!」

パァンッ!!

「わあぁんっ!!」

ロイにお仕置きされて真っ赤になったお尻は、触れるだけでも痛いのに
そこをさらにぶたれるなんてたまらない。
エドワードは、もはやハボックの腕の中で暴れる気力もなく、ただ大粒の涙を床に零すだけだった。

「ふぇぇっ・・・も、やぁっ・・・」

ふいにハボックは手を止めて、泣きじゃくるエドワードを床に下ろした。

「ふぇ・・・・・・?」

5回だと言っていたから、まだ後2回残っている。
エドワードは泣きじゃくりながらハボックを不思議そうに見上げた。

「ま、大佐にお仕置きされたんだし、大将がもうしないって約束できるんなら
オレからはこれで終わりにしてやるけど?」

どうする?と、ハボックはエドワードの顔をのぞき込む。

「・・・するっ・・・やくそくするっ!!」

もうこれ以上痛い目に遭いたくないエドワードは、コクコクと首を大きく縦に振って返事をした。

「なら、よし」

ハボックはぐりぐりとエドワードの頭を撫でてから、ズボンを元に戻してやった。

「・・・じゃぁ大佐、確かに書類渡しましたからね」

ハボックがそう言って執務室を出て行こうとした時、閉じようとした扉の隙間から見えたのは
隣に立っているロイのズボンを、顔を赤くして、そっと引っ張るエドワードの姿。
厳しくお仕置きされた後は、さすがのエドワードも多少は甘やかされたいらしい。

(大将も随分と素直になったこって・・・)

ハボックは15歳の頃のエドワードとのギャップに驚きつつも
その後の光景を微笑ましく思って、静かに扉を閉じた。





「これに懲りたら、いい子にしていることだよ。鋼の」

いつものようにロイに膝の上に向かい合わせに座らされて、そっと頭を撫でられる。

「・・・・・・ぐすっ・・・」

お仕置きは終わっても、お尻はまだ熱いし、何より痛い。
エドワードもいつものように、ロイの胸に顔を埋めて、グスグスと泣きじゃくる。

(・・・・・・あれ・・・?)

ロイの胸に顔を押し付けていて、エドワードはふと気が付いた。
いつもと何かが違うのだ。

(・・・・・・・・・あ)

そして、ハッと思い当たる。

「・・・・・・大佐・・・」

「ん?何だね?」

「大佐は大人だけど、タバコ吸っちゃダメ!!」

「・・・あ・・・あぁ・・・・」

エドワードが強く言うので思わず頷いたものの、ロイには何のことだかわからない。
エドワードとて恥ずかしくてロイに理由を話せるわけもない。

ロイからタバコの匂いがすると、お仕置きの後で
ぎゅっと顔を埋めてゆっくり甘えられなくなるから嫌だ・・・なんて。