ぷちらば


09.My Fair Lady

その日の夜、東部の街を走る一台の車があった。

「わかっているとは思うが・・・・・・いつものように騒動を起こして、目立つんじゃないぞ?
 君の行動ひとつで、作戦の成功が左右されるんだからな・・・」

「あ〜もう、うっさいな〜!!さっきから大佐ってば、そればっか!!
 そんなに言われなくても、ちゃんとわかってるっての!!」

その車に乗っているのは、男の運転手と、後部座席に若い男。
それからその若い男の隣に、5歳ぐらいの可愛らしい少女が一人。

「こら、全然わかってないじゃないか。
 今の君は小さいとはいえ、立派なレディなのだよ?そんな口汚い言葉を使うんじゃない。
 それに、私のことは『大佐』と呼ぶなと、そう教えただろう?」

そう言いながら、若い男は隣に座っている不機嫌な顔をした少女の頬を軽くつねった。

「ひた〜っ!!・・・・・・なにすんだよっ!!」

頬をつねられて、少女は余計不機嫌そうに抗議する。
その言葉遣いは、どう考えても男の子のそれで。

「ほら、また・・・それがいかんと言っているんだよ、『エレノア』。
 私のことは何と呼べと教えたかな?」

「う〜・・・・・・」

『エレノア』と呼ばれた少女は、つねられた頬をさすりながら、口を尖らせて隣の男を睨むが

「貴重文献の閲覧許可が欲しくはないのかね?」

「うっ・・・・・・」

不敵な笑みを浮かべる男の前には、むしろ逆に自分の方が追い詰められてしまう。

「『エレノア』、返事は?」

「う〜・・・・・・」

いくら反抗しても、唸っても、この男の前では、まるで効果がないと判断したのか

「・・・・・・・・・わかりました。・・・おっ・・・お、『お父様』・・・」

たいそう不機嫌そうで、顔を引きつらせながらではあったが、何とか返事を寄こし
よほど恥ずかしいのか顔を真っ赤にしながら、ぷいっとそっぽを向いた。

(やっぱ・・・いくら貴重文献の閲覧許可と等価交換だからって、こんなこと引き受けるんじゃなかった・・・・・・)

東部の街を車のガラス越しに見ながら、『エレノア』は深くため息を吐いた。

そもそも、どうしてこんな事になってしまったのか。
その原因は3時間前にさかのぼる。





錬成のリバウンドで、エドワードが5歳児程度に小さくなってから、今日で18日目。
依然として、元に戻る手がかりは何も見つからず、エドワードは今日も今日とて資料室で文献を漁っていた。

「だいたい、この資料室の文献なんて、もう読みつくしてるんだよな〜・・・」

良い資料が見つからない事に、ぶちぶちと文句を言いながら、それでもエドワードはページを捲る。

「・・・ならば、君がまだ見たことのない貴重文献ならどうだね?」

「!?」

ふいに背後から声がして、エドワードは驚きながら、扉の方へと勢い良く振り向いた。

「大佐ッ!!」

「はかどって・・・というわけではなさそうだね、鋼の」

いつの間に来たのか、資料室の扉にロイがもたれかかっている。

「大佐、さっき言ってた貴重文献って?」

いつの間にロイが来たのかとか、ロイの皮肉などを相手にすることもなく
エドワードはロイの言った『貴重文献』の言葉に飛びついた。

「なぁっ、貴重文献って!?それ、どこにあんのっ!?」

エドワードは手に取っていた本を放り投げて、ロイに詰め寄った。
あまりに勢い良く餌に飛びついてきたエドワードを見ながら、ロイは

「その貴重文献を見るのには閲覧許可が必要なんだが・・・・・・」

と、更に勿体つけた言いぶりをする。
そうする事によって、餌の価値は上がるというものだ。

「出してっ!!大佐、その閲覧許可出してっ!!」

ロイの思惑通り、餌に釣られた獲物は更に喰い付いてきた。

「鋼の・・・・・・ここはひとつ、君のお得意の等価交換といこうじゃないか」

「・・・・・・等価交換・・・?」

ロイはニヤリと笑いながら、エドワードを見下げ、エドワードはといえば
まんまとロイの術中に嵌っていることにも気付かずに、きょとんと不思議そうな顔でロイを見上げた。





「おお〜・・・大将、なかなか似合ってんじゃねぇか!!」

「ホントだ、可愛い!!兄さんは母さん似だもんね〜」

「ほぉ、これはなかなか・・・・・・まるで本物の女の子だな、鋼の」

ホークアイに連れられて、執務室に入って来たエドワードに
ハボック、アルフォンス、ロイの三人が口々に感想を述べる。
だが、その顔は感心しているというよりは、むしろ楽しんでいると言った方が正しく思える表情だ。

「てめぇら・・・・・・好き勝手言ってんじゃねぇ〜ッ!!」

それを感じ取ったエドワードは、今にも飛び掛らんばかりの勢いで叫んだが

「エドワードくん、ダメよ。今は女の子なんだから。
 せっかくの格好が台無しになってしまうでしょう?」

ホークアイはエドワードの肩に手を置いて、顔をそっと覗き込むと、そう言いながらニコリと微笑んだ。

「うっ・・・・・・・・・」

「せっかくこんなに可愛らしい格好をしているんだから、ちゃんと女の子らしく・・・ね?」

ホークアイに諌められて、エドワードは仕方なく振り上げたこぶしを下げた。

薄いピンクのワンピースに、ワンポイントに赤のリボンの飾りが付いた真っ白なブーツ。
それに、袖からはチラリとレースがのぞく上品な白の上着。
普段はみつ編みにしている髪の毛は、今日は高い位置で赤いリボンが結われていて
金糸の髪は肩まで下ろされていた。

そう、ホークアイの言う、今のエドワードの可愛らしい格好というのは、何を隠そう女装姿のことである。
問題かと思われた右腕・左足の機械鎧は、スカートのフレアや、黒のハイソックス、絹の手袋などで
上手く誤魔化せており、今のエドワードはどこからどうみても女の子そのものであった。

「いくら等価交換だからって・・・なんで女装なんだよッ!!」

エドワードは顔を真っ赤にしながら、ロイをキッと睨みつける。
本物の5歳児ならば、わけもわからず着せられて、文句の言いようもないだろうが
エドワードは身体は5歳でも、中身は15歳のままなのだ。
屈辱や、恥ずかしさから、当然文句のひとつも言いたくなる。

「貴重文献を見たくはないのかね?」

「うっ・・・・・・・・・」

ロイにそう言われてしまうと、エドワードはもう何も言えなくなってしまう。
何としても今のこの5歳児の生活から抜け出したいのだ。
その為には、ロイが握っている貴重文献の情報がどうしても欲しい。

「いいじゃない兄さん。今夜のパーティで大佐に同伴するだけで良いって話だし。
 せっかくだから、楽しんでくれば?それで貴重文献が見られるなら、悪くないと思うよ?」

アルフォンスが慰めるように言ってくれるが、エドワードとしてはどうにも納得がいかない。

「だって・・・・・・それなら何も女装じゃなくても・・・・・・」

「作戦上、どうしても『女の子』である必要があるんだよ」

「はぁ?作戦?」





「はぁ〜・・・作戦だか何だか知らないけど、てめぇの仕事に巻き込むなよな〜・・・」

『エレノア』ことエドワードは、不貞腐れた表情で車窓に映る街並みを眺めながら、ぶつぶつと文句を漏らした。

結局のところ、ロイの言う作戦とは、今夜のパーティの裏で行われる武器の売買を阻止することと
それから、その武器商人の摘発であった。
表向きは華やかなパーティを装っており、敵の目を欺くには、成人カップルで乗り込むよりも
見た目は親子の方がより効果的だと思われた。
それに小さな女の子だとなれば、万一立てこもられたとしても、人質としては足手まといにしかならず
すぐに解放される事になるだろうと、そう踏んでいた。
だからこそロイは、エドワードを女の子に仕立て上げようと考えたのだ。

「こら、また口調が戻ってるじゃないか。
 表向きは華やかなパーティなのだから、それなりに振舞ってくれたまえよ」

呟いたつもりがロイには聞こえてしまっていたようで、またしてもエドワードは軽く頬をつねられた。

「ひたっ!!・・・・・・もう、わかってますよ『お父様』!!」

エドワードはこうなりゃヤケだと言わんばかりに、ロイに向かって叫んだ。

そうこうしている内に、ハボックの運転する車は会場へ到着し、ロイとエドワードは
公爵とその令嬢という肩書きで、パーティへと紛れ込むことに成功した。





「私は少し仕事をしてくるから、ここにいい子で待っていなさい」

ロイはそれだけ言うと、このパーティの主催者なのか、たくさんの招待客に囲まれている男に向かって
混雑する会場の中を行ってしまった。
取り残されたエドワードは特にすることもなく、ボーっとバルコニーで風にあたることにした。
立食形式になっているから、好きなものを食べられるし、可愛らしい女の子の格好をしているからか
周りの大人たちはちやほやしてくれる。
一応令嬢ということになっているので、それなりに振舞うのは多少はめんどくさかったが
これで貴重文献が見られるなら、アルフォンスが言った通り、悪くない等価交換かもしれない。

(意外と楽な仕事かもな〜・・・・・・)

エドワードがバルコニーでちょっぴり得した気分を味わっていると、華やかなパーティ会場から
そそくさと真っ暗な裏庭へと急ぐ、不審な男の影を発見した。
ロイに知らせようと思って会場を見渡してみるが、あいにくとこの大広間のどこにもロイの姿は見えない。

(・・・・・・ま、いっか。あいつがホントに大佐の言ってた武器商人かどうか、まだわかんないし・・・)

確かめてからでも遅くは無い、そう判断したエドワードは、そっとパーティ会場を抜け出して
その男の後を追うことにした。

足音を消して、先程自分がいた会場から、男が向かったであろう裏庭へ廻る。

(いた・・・・・・・・・!!)

裏庭でキョロキョロと周りの様子を窺っているシルエットは、バルコニーから見えた男に間違いなかった。
エドワードは建物の影に隠れて、じっとその様子を見つめる。
すると、男は裏庭にある倉庫へと入って行った。
エドワードもそれに続いて、建物の影から、今度は倉庫の壁へと移動し
今度は少し高い位置にある窓から中の様子を窺う。

真っ暗な倉庫で男は何やらゴソゴソと動いている。
仲間はいないようだし、一人ぐらい自分ひとりで何とかできると踏んだエドワードは
パチンと掌を合わせると、そのまま倉庫の壁に手をつき、倉庫内にいる男に向かって
石の柱が当たるように錬成する。
ゴツン!と鈍い音がして、間違いなくエドワードの錬成した石柱は命中し、男は床に倒れた。

(やったっ!!・・・・・・どんなツラしてのびてんのかな〜・・・)

エドワードは意気揚々と真っ暗な倉庫に足を踏み入れ、そっと男に近づいて行く。
男に命中させた石柱をとりあえずは元に戻して、床に転がっている男を見やる。

すると、倒れて気絶しているかと思われた男は低く呻きながら、手を伸ばしてエドワードの左腕を掴んできた。

「おわっ!?ちょっ・・・・・・なにすっ・・・!!」

そのまま立ち上がろうとする男に、腕を掴まれたエドワードは半分パニックで、何とか逃れようと、ジタバタともがく。
だが、大人と子供の力の差は大きく、エドワードがどんなに抵抗しても、男はびくともしない。
それに片腕を掴まれてしまっているから、得意の錬金術も使えない。
男はエドワードの左腕を掴んだまま、ズルズルと入り口付近へと移動しようとしていた。

「やっ・・・・・・やめろってばッ!!・・・・・・いたぁっ!?」

バチンッ!!と音がして、お尻に痛みを感じた瞬間、倉庫の中がパッと明るくなった。

「まったく君は・・・大人しくしていろと、あれほど言ったのに・・・」

その聞き慣れた声にエドワードは驚いて、左腕を掴んでいる男を見上げた。

「・・・なっ・・・・・・たっ、大佐ッ!?」

驚いて固まっているエドワードを、今度は倉庫の中の方へ引き入れて、ロイは倉庫の荷物に適当に腰掛けた。

「なっ・・・なんでっ!?大佐、仕事は!?」

荷物に腰掛けたロイの前に立たされたエドワードは、状況がさっぱり飲み込めず、先程から目をパチパチさせている。

「仕事は終わったよ。今、ホークアイ中尉達が動いているところだ」

「え・・・じゃぁ、何で大佐がこんなとこにいんの!?」

「武器商人がこの倉庫に地下室があると白状したのでな。それを探りに来たんだ」

「え・・・あ・・・そうなんだ・・・」

「そうしたら、突然石柱が飛び出して来てねぇ・・・。
 間一髪身をよじって床に倒れこんだんだ」

「あ・・・・・・あはははは・・・・・・」

ようやくエドワードにも状況が飲み込めてきた。

「さて、鋼の・・・何か言うことがあるんじゃないのかね?」

ロイはそう言うと、ずっと掴みっぱなしだったエドワードの左腕をぐっと引き寄せて
そのままエドワードを自分の膝の上に乗せた。

「やっ・・・・・・やだっ、やだぁ!!」

5歳児の身体になってからというもの、2・3日に一回はロイの膝の上に乗せられているから
これから何が起こるかなんて、わかりすぎるぐらいわかっていたけれど、それでも逃れられるものなら逃れたい。
エドワードはそんな一心で、バタバタと抵抗を試みるが、腰をがっちりとロイに押さえ込まれてしまっていて
足や手をいくらバタつかせたところで、びくともしない。

いつもならズボンだから、多少は脱がされるまでに時間がかかって、その間に抵抗も出来るのだが
今日はあいにくとスカートだから、捲くるだけで済んでしまう。
軽々と下着を膝まで下ろされて、晒されたお尻に倉庫の空気がひんやりと冷たい。

「やっ・・・やだぁっ!!たいさ、おねがいっ!!」

エドワードがどんなに言葉に訴えたところで、ロイが何もしないで許してくれたことなど一度も無い。
いつだって容赦なくぶたれて、顔が涙でぐしゃぐしゃになるまで泣かされた。
それは、場所はパーティ会場で、女装させられている今日も、やはり例外ではないようだ。

「言いつけも守れないような子は、どうされるんだったかなぁ・・・鋼の」

ロイは確認するようにそう言うと、エドワードの腰をぐっと押さえつけ、容赦の無い平手を振り下ろす。

バチンッ!!パンッ!!パンッ!!パァンッ!!

「やっ・・・やぁっ・・・・・・ったぁっ!!うわあぁんっ!!」

エドワードはといえば、ロイの確認の言葉を聞いている余裕などまるで無く、突然襲ってくる痛みと恐怖に
早速鳴き声を漏らし始めた。

「私は君に大人しくしているようにと、何度もそう言ったはずだが・・・?」

ロイは呆れたように言いながら、相変わらずきつく平手を振り下ろしてくる。

パァンッ!!パンッ!!バチンッ!!

「ひぅっ・・・・・・いたぁっ・・・ひんッ!!」

「君だって、そんなに言われなくてもわかっていると・・・そう言っていたのではなかったのかね?」

パンッ!!パンッ!!パァンッ!!

「だっ、だってぇ・・・・・・ふぇぇっ・・・・・・やぁっ!!」

ロイに問われても、エドワードはお尻が痛くて、まともに答えられる状態ではない。

バチンッ!!パァンッ!!パンッ!!

「うわぁんッ!!も・・・やだぁ〜ッ!!」

エドワードが痛みに耐え切れず手足をバタつかせる度に、ロイは少々きつめに平手を振り下ろして
エドワードの抵抗する気力を徐々に奪っていく。

バチンッ!!パンッ!!パァンッ!!バチィンッ!!

「ふぇぇっ・・・・・・ひぅっ、や・・・・・・も、やだぁっ!!」

バチンッ!!パンッ!!パァンッ!!バチンッ!!

「やっ・・・たいさ、も・・・・・・ゆるしっ・・・うわあぁんッ!!」

エドワードはボロボロと大粒の涙を零しながら、わぁわぁと泣き喚くが、ロイの手が緩む事は無い。
そのままバチンッ!!バチンッ!!と強くお尻を引っ叩かれる。

「も、やっ・・・・・・おねがっ・・・・・・もう、やだぁっ!!」

エドワードは遂に我慢しきれず、右手を一生懸命伸ばして、自身のお尻をかばった。
そっと触れたお尻は、さっきはひんやりと冷たく感じたのが嘘みたいにじんじんと熱くて、ヒリヒリと痛む。

「ひっく・・・・・・ぐすっ・・・・・・たいさ、おねがっ・・・・・・」

泣きじゃくって、ろくに呼吸も出来ないくせに、エドワードはロイに必死に許しを請う。

「も・・・・・・いたいのやだぁ・・・・・・ひくっ・・・」

膝の上で小さく震えながらも、エドワードは涙でぐしゃぐしゃになった顔で何とかロイを見上げた。

「・・・鋼の・・・勇敢に戦うのも良いが、時には状況判断も大切だ。
 こんな小さな身体で、大人の男に対抗できるハズがないだろう?」

ロイはエドワードを諭すように、静かにそう告げた。

「・・・だってっ・・・・・・だいじょぶ・・・だと、おもった・・・」

エドワードは口を尖らせて、小さく呟いた。
15歳の時ならば、大人が相手だろうが、誰が相手であろうが、勇敢に戦い、そして勝ってきた。
そんなエドワードだから、自分の力に絶対の自信を持っていることは、ロイとて理解できる。
だが、それはあくまでも15歳の身体での話であって、今のエドワードは5歳の身体なのだ。
15歳の時の感覚で、今までのように危険に首を突っ込んでいては、命がいくつあっても足りない。

「ほぅ・・・大人相手に勝てると思ったのかね?」

「だってっ・・・いつも・・・勝つし・・・・・・」

「そうか、ならば私の膝の上から逃れてみたまえ」

「へっ・・・?」

そう言うとロイは、エドワードを膝に乗せたまま足を組み、自身のお尻をかばっていたエドワードの右手を
背中に縫いつけ

バチンッ!!バチンッ!!パァンッ!!

「ひぅっ・・・・・・やっ・・・いたぁッ!!」

既に真っ赤になったエドワードのお尻に、容赦の無い平手打ちを再開した。

バチンッ!!パンッ!!パンッ!!パァンッ!!

「やだぁっ・・・・・・や、たいさっ・・・・・・いやぁっ・・・ふえぇぇッ!!」

右手を封じられ、更にはお尻を高く上げさせられて足は地面につかない。
足をバタつかせたところで、ロイは更に厳しく太ももまでピシャリとぶたれる。

バチンッ!!パァンッ!!パァンッ!!バチィンッ!!

「ふぇぇっ・・・・・・や、もっ・・・ごめんなさっ・・・!!うわああぁんッ!!」

どうやっても、どうもがいても、ロイの膝の上からは逃れられなくて。
ロイは怖いし、お尻はものすごく痛いし、エドワードはボロボロと涙を零しながら、顔をぐしゃぐしゃにして泣き叫んだ。

「ひっく・・・ぐすっ・・・・・・ふぇぇっ・・・」

そっと抱き起こして、膝に向かい合わせに座らせて、頭を撫でてやっても、エドワードはなかなか泣き止まない。
ロイの服をひしっと掴んで、胸に顔を埋めたまま泣きじゃくっている。

「鋼の、少しは自分のことを自覚したまえ。
 認めるのは癪かもしれないが・・・今の君はどうあがいても、5歳の子供だ。
 15の時の感覚で無茶をしては、いくつ命があっても足りないぞ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「君はとても聡い子だから、ちゃんとわかるだろう?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・鋼の?」

返事も寄こさないエドワードを不審に思って、ロイは頭を撫でる手を止めて
エドワードの顔をそっと覗き込んだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

そっと覗き込んでみれば、エドワードは泣き疲れたのか、ロイの胸に顔を埋めたまま寝入っていた。

「ホントにこの子は・・・・・・・・・」

ロイは、やれやれ・・・とため息を吐きながら、エドワードをそっと抱きかかえて立ち上がり
そのまま倉庫をあとにした。





「あら・・・・・・エドワードくん、寝ちゃったんですか?」

ロイがパーティ会場へ戻ると、ホークアイが現場を仕切り、ことは作戦通りに進んでいた。

「ああ・・・・・・少々、疲れたようでね」

ロイが苦笑交じりにそう言うと、ホークアイには何があったのか大体わかったようで

「寝顔はこんなにも可愛いのに、いつもは無茶ばかりですものね・・・」

気を遣って、自分の上着をそっとエドワードにそっと掛けた。

「まぁ・・・その無鉄砲さが、このお姫様の良いところでもあるんだがね」

「・・・そうですね」

そう言いながら、ロイとホークアイは寝顔だけは可愛いお姫様なエドワードを見て笑った。