ぷちらば


06.お留守番

「やだったらやだぁ〜〜〜ッ!!」

ロイと部下達の集まった執務室に子供特有の甲高い声が響く。

「ちょっと兄さん!何がそんなに嫌なのさ?」

弟は兄のワガママをたしなめる様に尋ねるが、その視線は本来よりも
ずっと下を向いている。
そう、エドワードは錬成のリバウンドで身長が5歳児程度に縮んでしまったままなのだ。
何とか元の姿に戻るため、アルフォンスがロイの紹介で研究所を訪ねたが
成果は上がらず、エドワードはしばらくこのままの姿で過ごす事が決定してしまった。

「だって・・・なんで大佐の家なんだよ!!
 もっと他に・・・どっかに宿でもとって、泊まれば済む話だろ!?」

エドワードは猛烈に抗議する。
しばらくは東部に滞在しながら、元の身体に戻る方法を探すことになったので
とりあえず、まずは今夜からの宿を決める事になった。
ロイは自分の邸宅にエドワード達を寝泊りさせても良いと言ってくれたのだが
エドワードにとってはそれがとにかく気に入らない。

『君が小さいうちに厳しく躾けておこうか』

などと言われて、先程こっぴどくお尻をぶたれたばかりなのだ。
有言実行な性格のロイのことだから、家に一緒に住むことになれば、何かと叱られて
毎日のように泣かされることは目に見えていた。
だからこそエドワードは、何とかしてロイ以外の家に泊まろうと画策しているである。

「他にも・・・ほら、フュリー曹長んトコとか!!」

エドワードはフュリーを縋るような目つきで必死に見上げる。

「あ・・・でもウチは寮ですから・・・・・・」

困ったようにエドワードを見やるフュリーにそう言われて
エドワードはぐるりと周りを見渡した。

「「同じく、ウチも寮だから」」

ファルマンとブレダには、目が合った瞬間に断られてしまった。

「もう、兄さん!せっかく大佐が好意で言ってくれてるんだから・・・・・・」

「う〜・・・じゃぁ、ハボック少尉んトコに泊まる!!」

とにかくロイの家にだけは泊まりたくないエドワードは
傍にいたハボックの手を掴んでそう主張した。

「あ〜・・・あのよ、大将。
 悪いんだけどな、俺明日から出張でいないんだわ」

ハボックは申し訳なさそうに苦笑する。

「そ、そんなぁ・・・・・・」

ハボックにまで断られて、エドワードはがっくりと肩を落としてうなだれた。

「じゃぁ、ウチに泊まる?エドワード君」

「え、いや・・・それは・・・・・・」

ホークアイがそう助け舟を出してくれたのだが、いくら今は外見上5歳にしか
見えなくても、中身は15歳の少年である。
エドワードとて、いかにロイの家が嫌でも、だからといって独身女性の部屋に
上がり込むのは気が引けた。

「いい加減にしたまえ、鋼の。
 外見上5歳の今の君に、ホテルは部屋を貸してくれないぞ?」

「うっ・・・・・・・・・」

今まで黙ってエドワードの奮闘を見ていたロイが、とどめ打ちのように告げる。

「それに、そのナリでは銀行で研究費を下ろすことも出来ないだろう?」

「うぅ・・・・・・・・・・・・」

ロイの更なる追い討ちにエドワードは口を尖らせたまま黙り込んでしまった。

「ほら、兄さん。大佐にちゃんと『よろしくお願いします』って言わなきゃ」

礼儀正しい弟は、ペコリと頭を下げてロイに礼を言ったが
小さい兄は未だに納得のいかない顔でプイっとそっぽを向いた。

こうしてエドワード不本意ながらも、しばらくの間はロイの家で生活する事に
なったのである。





「・・・・・・・・・いってらっしゃい・・・」

ロイ・マスタング邸の玄関先で、エドワードはたいそう拗ねた顔つきで小さく手を振った。
ロイはこれから司令部へ出勤だし、アルフォンスは資料を探しに軍の図書館へと
出かけようとしていた。
小さいエドワードを司令部に連れて行くわけにもいかないし、例によって軍施設は
子供の出入りが禁止だから、エドワードはロイの家で大人しく留守番を
させられることになってしまったのだ。

「僕、なるべく早く帰るから・・・ね?」

「鋼の、お土産を買ってきてあげるからいい子にしてなさい」

アルフォンスとロイはそう言いながらエドワードの頭をぐりぐりと撫でる。

「あ、誰か知らない人が来ても、ドア開けちゃダメだよ?」

「あぁ、それから、書斎には入っても良いが実験器具には危ないから手を触れないように」

「「それから・・・」」

二人に揃って子ども扱いされて、エドワードは余計にむくれてしまい

「・・・さっさと行けッ!!」

頭を撫でる手を振り払って、バタンッと乱暴にドアを閉めた。

「おやおや・・・お子様のご機嫌取りは難しいね」

ロイはそう苦笑しながらアルフォンスを促し、二人は足早に出かけて行った。





一人屋敷に取り残されたエドワードは、ロイの書斎で錬金術書やその他の資料を
読みながらお菓子を食べたり、寝転がってみたり・・・・・・
とにかく暇をもてあましていた。
ロイが外は危険だと言って、エドワードの外出を禁止しているから
勝手に図書館や資料室に出かけることも出来ないし、出かけたところで
今のエドワードは摘み出されるのがおちかと思われた。

「・・・あ〜・・・もう、何でオレだけ留守番なんだよ・・・」

エドワードは、はぁ〜・・・とため息をつきながら不平をもらす。
いつもアルフォンスと一緒に騒がしい旅を続けてきた身である。
ただでさえ、自身がトラブルメーカーでしょっちゅう騒動に巻き込まれているのだ。
こんなに静かに、一人で過ごす時間なんて退屈で仕方がない。

床に転がりながら、ふと視線を机に向けてみると、何か白いものが
少し姿をのぞかせていた。

「・・・なんだろ・・・」

むくっと立ち上がって、よくよく見てみると、どうやらそれは
ロイの発火布の手袋のようだった。

「お〜、いいもん発見!!」

退屈で仕方がなかったエドワードは、発火布の発見に目を輝かせた。
自分は錬成陣なしで錬成はできるけれど、そこから焔を出す事はできない。
発火布を使っての焔の錬成。
理論上では理解できるだけに、どういう構築式になっているのか
実は前々から興味があったのだ。

「へぇ・・・やっぱここに錬成陣書いてあるんだ・・・」

エドワードはしげしげと手袋を眺めながら、興味本位でそれを自分の手にはめてみる。
当然5歳のエドワードには手袋は大きすぎてぶかぶかだったが
たぐり寄せてなんとか指をはめ込んだ。

「・・・・・・・・・・・・」

エドワードは何だかそわそわと落ち着かない。
手袋をはめたからには、使ってみたい!そんな気持ちが大きくなってきたのだ。
5歳になってからは上手く錬金術が使えないことも多くて、失敗ばかりしていたから
焔の錬成も失敗する率が高いのだが、そこはやっぱりエドワード。
何でも試してみないと気が済まない。
これもまた科学者である錬金術師の性である。

(まぁ多分失敗するだろうし・・・・・・ちょっとぐらい・・・いいよな・・・?)

ロイには実験器具には触るなと言われたけれど、試してみるぐらいは
構わないだろうと考え、エドワードはいつもロイがするように、パキンッと
指と指をこすり合わせて、小さく火花を散らした。





「あら、今日はエドワード君はお留守番ですか?」

ホークアイが書類の束を抱えながら執務室に入ってきて、開口一番そう言った。

「そうそう司令部に連れてくるわけにもいかないだろう?
 今日は私の家で留守番だよ」

書類に目を通しながら、ロイが答える。

「大佐のことですから、心配だと言って連れてこられるかと思っていましたが・・・」

ホークアイは

「追加分です」

二コリと軽く微笑みながらドンッと書類の束を机に載せた。

「・・・・・・何が心配だと言うのかね?」

書類の多さに顔を引きつらせながらも、サインの手を止めてロイはホークアイを見る。

「エドワード君・・・大人しくしているのが苦手な子ですよね。
 一人で・・・大丈夫でしょうか?」

ホークアイにそう言われて、ロイは内心本当にエドワードに一人で留守番を
させても良かったのだろうかと妙な焦燥感に駆られた。
確かにホークアイの言ったとおり、ロイもエドワードが今まで
一人で大人しくしていたことなどないように記憶している。
トラブルメーカーな彼は、いつでも騒ぎを起こしては、こちらをハラハラさせていた。

「・・・まぁ、今は5歳だしな。
 錬金術もろくに使えないようだし、大人しくしていざるを得ないだろう・・・」

などと、自身を納得させるように言ってみたものの、ロイの焦燥感は消えない。
それどころか、むしろ余計に不安になってくる。

「・・・・・・・・・中尉」

「わかっています。
 その書類の山は明日が期限ですので、遅くとも夕方までにはお戻りください。
 その他の予定は何とかしておきます」

「すまない」

ロイはそう言うと、有能な部下に感謝しながら、足早に執務室を後にした。





「・・・・・・・・・・・・げほっ」

エドワードが咳き込みながら起き上がると、そこは先程までとはまるで景色が違っていた。
本棚は倒れて壊れているし、窓ガラスは見事なまでに全て割れている。
少し焼け焦げた絨毯の上には、本棚から落ちた文献と机にあった書類や実験器具が
散乱していた。

「・・・・・・・・・や・・・やっちゃった・・・」

失敗すると思って適当に錬成したのがまずかった。
思わず目を背けたくなるような現実にエドワードは顔面蒼白になる。

「早くなんとかしなきゃ・・・・・・!!」

実験器具には触るなと言われていたのに、発火布で錬成したことがバレたら
手酷くお仕置きされるのは確実だ。
実は昨日のお仕置きが効いていて、まだ少し痛むのだ。
こんな状態で、またきつくお仕置きされたら・・・・・・考えるのも恐ろしい。
エドワードは何とかロイをごまかすべく、わたわたと部屋を片付け始めたのだが・・・・・・

「鋼の?どこにいるのかね?」

玄関先からロイの声が聞こえてくる。

(何で!?今日は夜まで仕事のハズじゃ・・・!?)

突然のロイの出現にエドワードは完全にパニックである。
とりあえず書斎の片付けはそのままにしておいて、ドアを閉めるとパタパタと廊下を走る。
ロイとは丁度リビングで落ち合う形になった。

「大佐!今日は夜まで仕事じゃなかったっけ?」

何とか平静を装ってロイを見上げる。

「ああ、そのハズだったんだがねぇ・・・・・・」

ロイが急に表情を曇らせたものだから、エドワードはまさかもうバレてしまったのかと
思わずビクリと肩を震わせてしまう。
ロイはじ〜っとエドワードの顔を視線で問うように覗き込む。

「な・・・なんだよ・・・・・・」

エドワードは内心ビクつきながらも、ロイを睨み返した。

「鋼の・・・鼻にススが付いているぞ?」

「へっ!?」

ロイのそう言われて、エドワードはサッと自身の鼻を両手で覆う。

「何をした?」

低い声で問いながら顔を覗き込まれて、エドワードは気まずそうに視線を泳がせた。

「・・・・・・書斎か」

ロイは一言それだけ言うと、エドワードをリビングに残し、足早に書斎へ向かう。

「あっ・・・書斎は・・・!!」

あの酷い状況の書斎を見られてしまっては、言い訳のしようもない。
エドワードは慌ててロイの後を追い、何とか書斎へだけは行かせまいと
軍服の袖を引っ張った。
しかし、大人と子供の力の差は歴然で。
一生懸命引きとめようとするが、逆にズリズリと引きずられるような格好で
書斎の前まで来てしまった。

ガチャリとロイがドアノブに手をかける。

「あ、開けちゃダメ―――――ッ!!」

エドワードの絶叫も虚しく、書斎の扉は軽々と開かれてしまった。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

崩れ落ちた本棚、見事なまでに全て割れている窓ガラス、焦げた絨毯に散らばっている
実験器具・・・・・・書斎のあまりの状況に、ロイは思わず無言になってしまった。

「あの・・・・・・その・・・・・・これは・・・ッ!!」

エドワードは何とか言い訳しようとしてみるものの、この状況を見れば
エドワードが何をしたかなど一目瞭然である。

「鋼の・・・・・・おいで」

言うが早いか、ロイはエドワードをサッと小脇に抱えるとバチンッ!とお尻に強く
平手を振り下ろした。

「ひぅっ!」

突然のことにエドワードは短く悲鳴を上げる。
けれど、ロイはそんな悲鳴にはお構いなしに、エドワードを抱えたまま歩き出した。

「やっ・・・やだぁ!!大佐、はなして・・・ッ!!」

ロイに抱えられながらも、エドワードは手足をバタバタさせて
なんとか逃れようと必死に抵抗する。
だが、その度にバチンッ!と強く平手で咎められる。
けれど、このままリビングに連れて行かれたら
これ以上に厳しいお仕置きになるのはもはや間違いない。
エドワードは何としても逃れようと精一杯暴れた。
けれど、結局は何の効果もなくリビングに連れてこられてしまった上
たくさんのお咎めがお尻に飛んできたために、エドワードの瞳には
もうすでに大粒の涙が溜まっていた。

ロイはリビングのソファに腰をかけると、膝の上にエドワードをうつ伏せにさせ
下着ごとズボンを脱がす。

「や、やめっ・・・・・・もうやだぁっ!!」

エドワードのお尻はもう既にピンク色で、ジンジンと熱を持っていた。

「たいさ、おねがっ・・・・・・!!」

ぐすぐすと泣きながら懇願してみるが、それを聞き入れてくれるほど
ロイは甘くなかった。

パンッ!!パァンッ!!バチンッ!!

「ひぅっ・・・や、やだぁ・・・いたぁっ!!」

容赦なく平手は振り下ろされ、ズボンの上からとはまるで違う乾いた音が部屋中に響く。
その音がする度にエドワードはびくんっと背をのけぞらせて悲鳴を上げた。

「うえぇぇっ・・・・・・も、やだぁ〜っ!!」

膝の上でも往生際悪くバタバタと逃れようとするエドワードに
ロイは少しばかり強めに平手を振り下ろして尋ねた。

「鋼の。私は今朝、君に何と言ったかな?」

「ふえぇぇっ・・・・・・も、や・・・ひぅっ」

尋ねながらも、ロイは叩く手を止めてくれない。
エドワードのお尻はとっくにピンク色から赤に染まっていた。

「鋼の、ちゃんと答えなさい」

「いたぁ・・・・・・や、やめっ・・・・・・やぁっ!!」

ロイはバチンッ!!と平手を振り下ろして、答えないといつまで経っても
終わらないと教えてやる。

パンッ!!パァンッ!!バチンッ!!

「ひぅっ・・・・・・じっけ・・・・・・きぐにっ・・・
 ・・・さわん・・・なって・・・やぁぁっ!!」

「何故触るなと言ったんだろうね?」

パンッ!!パァンッ!!バチンッ!!

「ふぇぇっ・・・・・・あぶなっ・・・からぁ・・・・・・ッ!!」

「君は危険性を理解していながら、実験器具に触って
 あまつさえ錬成まで試した・・・と」

パァンッッ!!バチンッ!!バチィンッ!!

「やぁぁッ・・・ひっ、いたぁぁっ!!!」

部屋に一際大きく音が響いた。

「ふぇぇんっ・・・・・・も、やだぁ・・・・・・ッ!!」

エドワードは涙でぐしゃぐしゃになった顔で、何とかロイを見上げ
許しを請おうとしたが、ロイから返ってきたのは、ほんの一言。

「今日はたっぷりと反省してもらおうか」

「うぇぇっ・・・も、やぁっ・・・・・・やだぁっ!!」

まだまだお仕置きは終わりではないと、そう宣告されて
エドワードはまたバタバタと暴れだした。
お尻はもう充分に赤く染まっていて、痛くて痛くてたまらないのだ。

「こら、大人しくしていなさい」

それでもロイは容赦なく平手を振り下ろしてくる。

「ふぇぇっ・・・うえぇぇっ!!」

エドワードはお仕置きが早く終わることを願いながら
ただひたすら泣きじゃくるしかなかった。





アルフォンスがマスタング邸の玄関扉を開けると、なにやらリビングから音が漏れてきた。
リビングに近づくにつれて、当然それは大きくなり、男の静かな声と
子供の甲高い泣き声と、そして肌をうつ音だと判別できた。

(兄さん・・・・・・また何かやらかしたんだな・・・・・・)

アルフォンスはふぅ・・・と呆れ気味のため息をつきながら、リビングの扉を開いた。
すると案の定、5歳な兄はこの家の主によるお仕置きの真っ最中であった。

「うぇぇっ・・・・・・アル〜ッ!!」

「あっ、こら鋼の!!まだ終わりじゃないぞ!!」

ロイが扉を振り返った瞬間に、エドワードはするりと膝の上から抜け出ると
一目散にアルフォンスに飛びついた。
毎度のことながら、これではどちらが兄かわかったものではない。

「今度は兄さん、何をやらかしたんですか?」

アルフォンスは自分の足にしがみついて、泣きじゃくる小さい兄を宥めながら
ロイに尋ねた。

「私の発火布でイタズラしてね。書斎を・・・・・・半壊させた」

ロイは言いながら、はぁ〜・・・とため息を漏らす。

「・・・兄さん」

アルフォンスが、じと〜っと足元のエドワードを見やると、エドワードは
ビクリと身を強張らせた。
こういう表情をしている時のアルフォンスは大抵怒っていて
兄のエドワードにも手厳しい。
普段滅多に怒る事がないだけに、怒らせてしまうと何より怖いのだ。

「や・・・だってっ・・・も、痛い・・・ッ!!」

エドワードはボロボロ涙をこぼしながら、アルフォンスの足にぎゅっとしがみついた。

「もう、兄さん!!
 ちゃんと大佐に『ごめんなさい』したの!?
 してないんだったら、ちゃんと言ってこなきゃダメでしょ!?」

「なっ・・・・・・だってっ・・・・・・!!」

「これはちゃんと『ごめんなさい』しないで逃げた分ね」

そう言うとアルフォンスは

バチンッ!!バチンッ!!バチィンッ!!

足にしがみついているエドワードのお尻に軽く3度平手を振り下ろした。

「ひっ・・・やぁっ・・・ふぇぇっ!!」

アルフォンスには当然助けてもらえると思って完全に油断していたエドワードは
軽いとはいえ、突然の平手打ちに短く悲鳴を上げ、ボロボロと涙を零す。

「ほら、ちゃんと言ってこないとダメでしょ!!」

アルフォンスは小さい兄を諌めながら、自身の足からひっぺがすと
そのまま首根っこを掴んで、ソファにいるロイに向かって放り投げた。

「うわあぁんっ!アルの薄情者ーっ!!」

放り投げられてロイの胸にダイブすることになったエドワードは
泣きながら叫んだが、当のアルフォンスはそそくさと書斎の修繕に
リビングを出て行ってしまい、言葉が返ってくることはなかった。

「さて・・・・・・勝手に逃げたことだし・・・最初からやり直しにしようか」

胸にダイブしてきたエドワードを膝に向かい合わせに座らせて、ロイは意地悪く微笑む。
そのロイの言葉にエドワードはゾッとした。
お尻はもう真っ赤で、アルフォンスにまでぶたれて痛くて痛くてとてもじゃないが
もう一度最初からなんて耐えられない。

「やっ・・・やだっ!!やだぁっ!!」

エドワードは火がついたように泣き出し

「うぇぇっ・・・ごめっ・・・ごめんなさいっ!!ごめんなさいぃっ・・・!!」

ロイの軍服を掴んで小さく震えながら、必死に『ごめんなさい』を繰り返した。

「ふぇっ・・・ごめ・・・なさ・・・っ!!」

「わかったわかった。もう良いよ」

少々の意地悪のつもりが、エドワードがあまりにも必死に『ごめんなさい』を
繰り返すものだから、さすがにロイも可哀そうになって、ポンポンと頭を撫でて
優しく笑いかけてやった。

「少しは懲りたようだね?」

膝の上で泣きじゃくるエドワードの頭を撫でながらロイが言うが
エドワードは泣きじゃくりながらロイを見上げるのが精一杯で、何も答えられない。

「好奇心旺盛なのは結構だが、それで命を落としては何にもならないだろう?」

泣きじゃくるのが精一杯なエドワードは、代わりにコクンと首を縦に振って返事をした。

「君がいなくなったら・・・アルフォンス君が悲しむ。わかるね?」

「・・・ひっく・・・・・・ごめんなさい」

「いい子だ・・・だが、それを言う相手は私ではなくアルフォンス君だろう?
 彼は書斎にいるだろうから、ちゃんと言っておいで」

ロイはエドワードを床に下ろすと、ズボンを元に戻してやってから、そっと背中を押した。
エドワードは痛むお尻をさすりながら、パタパタと軽い足音を立ててリビングを出て行った。

ロイはソファにどっしりと座り直し

「はぁ・・・まったく、お子様は手間がかかるな・・・」

自分には当分子供なんて要らないな、と思いながら苦笑した。





その後、一人で留守番させるのはやはり心配だと判断したロイによって
エドワードはちょくちょく東方司令部に姿を見せる事になるのだが・・・・・・
その結果、時折執務室から聞こえるロイと子供の会話の声に
ロイの隠し子疑惑が更に深まったことは、またしても公然の秘密である。